Brillia Art
Brillia Art Award

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No.14 
Brillia Art Award 2021作品・アーティスト紹介

TITLE:
Tokyo botanical
CONCEPT:
近年、SNSの爆発的な普及により、美術館で作品を背景にして写真を撮りSNSに投稿することが鑑賞の一つの楽しみ方となりつつある。
それを踏まえたうえで、本来であれば鑑賞者に見られる存在である絵画を、物体の背景になることを前提として提示している。

都心は高いビルが建ち並ぶ。人がつくった大きな建物、工業製品の硬さ、そこに差し込まれた植物たちはただの見映えのためなのか、環境のためなのか。
地面から生えてくるはずだった植物たちは、人間の手によって元々の重力に逆らい壁に埋め込まれた土から根を下ろし、顔をだす。
装飾的な植物は偽物のようで、無機質な建物が並ぶ感覚とどこか似ている。

フェイクの植物と建物の無機質な形とを融合させた非現実的な空間を表現した。

ARTIST PROFILE

小熊 杏奈 / Anna Oguma
2020年
多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻 卒業
2021年
多摩美術大学大学院美術研究科博士課程前期絵画専攻油画 在籍
2020年
多摩美術大学卒業制作 優秀賞
2021年
全国0・SM公募大賞展 奨励賞
ファーストエボリューション株式会社主催10m絵画コンペ 入選

ARTIST VOICE

Q:応募のきっかけは?
A:Brillia Art Awardは建物の会社が主催するアートの公募展ということで、楽しみ半分、自分ができるのかできないのかのギリギリの企画を立てて、落ちてもいいからとりあえず出してみよう、思い切りの作品を作ってみたいというのがきっかけでした。色々な公募展にチャレンジしてみようという年でもあったので、手当り次第応募していましたが、自分がやりたいこと、自分が展示したい場所にBrillia Art Awardはしっくりきていた気がしています。

Q:どうやって企画を考えたのですか?
A:まず、ぱっと浮かんだのが、今展示している作品ビジュアルでした。芸能人が植物の前で写真を撮ってSNSに上げてるのを見て、その人がもつブランド性なのか、投稿写真の全てが都心のオシャレなフォトジェニック空間に見えて、そういうことを連想させるのは実際に都心にオシャレに植物が生えてる場所があるからだろうなと人の知覚が作用することに興味を持ちました。それをどうやってギャラリー空間で表現するかを考えたときに、建物の会社が主催というのが念頭にあったので、建物の形なのかビルの形なのか、壁なのか、硬い形に植物が不自然に差し込まれている風景を描くことにしました。見た目にもわかりやすくシンプルに誰の頭にでも入ってくるものを考えました。

Q:作品に込めた想いを教えてください。
A:テーマは、都心、ビル、住まい、壁、植物、SNSです。SNSの写真に写るフォトジェニックな植物は都心を連想させ心地よい非日常を生み出しているというのが大きなコンセプトであり、空間に表現したかったことです。同時に、美術館で絵画を背景にして写真を撮りSNSに投稿することが鑑賞の一つの楽しみ方としてあり、絵画としての意味ではなく、見映えとして近年では存在していることに疑問を持ち、絵画を媒体としています。

Q:実際に作品を完成させた感想をお聞かせください。
A:大きな立体をパブリックな場所に設置するのは初めてで、クオリティや構造についてすごく不安でした。募集の資料の図面を見て、サイズは慎重に作ったつもりでしたが、ギリギリ押し込めた仕上がりになりました。実は壁側の面にも絵が描かれていますが、作品サイズ的に見えづらくなり残念です。完成した作品は、Brillia Loungeの中の建物の模型や向かいのビルなどと共鳴した形になり、また、周囲の植栽とも共鳴していて思いもよらないサイトスペシフィックな作品になったと思います。満足度は高いです。あとは2月初旬までそこで輝いていただけたらなと思います。

EVALUATION

小山 登美夫
(小山登美夫ギャラリー代表 / 日本現代美術商協会代表理事)

絵画を立体化する、絵画がウインドーの中で一つの物体としてあり、イメージはそこをループしていくように連続して描かれていく。八重洲の真ん中に突如と現れる緑の立体。ビルの谷間にある植物たちの絵画(写真ではなく)が見る人たちにどんな印象を持たれるのでしょう。私としてはこの立体が浮いているようなちょっとしたトリックがあったらもっと効果的かなと、も思いました。その緑のキューブはどこにでも移動可能なような…

野老 朝雄
(美術家) ※特別審査員

造花や人工の植栽に纏わり付く胡散臭さと作家がつくり出す自然には存在しない命の可能性の差は興味深い。植物への畏敬の念が唐草や松毬(ペイズリー)、佐藤直樹の作品を生んだ。コンセプト文の中にフェイクという文字が書かれていた。思い切り我儘に作家自身が統治する素敵なフェイクの世界を描いていって頂きたいと思った。

中尾 英恵
(小山市立車屋美術館学芸員)

遠くから見ると、ビル内部に設置された、パトリック・ブランの「垂直庭園」のような壁面植物の一部が見えているように見えますが、何か空間的なズレが生じています。近づくと写実的に描かれた絵でできた箱であることに気づきます。映える美術作品を逆手に取った具象絵画の可能性を追求した作品でありますが、鑑賞者の投稿をハッシュタグで追えるようなSNSを巻き込んだ展開も見てみたいと思わせる作品です。

坂本 浩章
(公益財団法人彫刻の森芸術文化財団 事業推進部 シニアマネージャー)

私は常々、都会を歩いていると足下にはかつて大地があり、豊かな自然があったのか。もしくは豊かな海が広がっていたのかと、思いを馳せることがある。同時に、自然がある場所から都会へと移動する景色を眺めながら、動植物によってつくられた環境と、人の営みによってscrap&buildで創られた都市のビル群は、ある意味同じ森の定義に当てはまるのでは感じてしまう。この作品が東京の真ん中で提言した対比について、道行く人達は足下に何を思うのか尋ねてみたいと思った。

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