Brillia Art
Brillia Art Award

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No.17 
Brillia Art Award 2022作品・アーティスト紹介

TITLE:
CONCEPT:
「潭」(タン)とは、山と森の奥にある水を深くたたえて、中に石が多く積もるところである。石が川に沿って、山を離れた場所に流される。都市が発展する一方で、人々も石のように移動している。
私は半年をかけて、故郷である中国の町、そして現在生活している東京で、同じ一つのレンガを撮影した。そのレンガを各都市のさまざまな場所でひたすら削って、徐々に摩耗させた。最後に、紙で作った偽物の「潭」の上に他の天然石のような不規則な形になった。現実に山に戻ることはできず、使用価値も無くなったレンガは、「美醜」や「優劣」などの人間の主観的な評価がもはや存在しない虚構の空間に、ただ普通の石に戻った。
紙でできた巨大な「潭」によって、谷とたまった水の接触面が表現された。その茶色の紙は中国で故人を追悼する時に使うもので、生死を超える効果があることを信じられる。そして、立体の部分は「船」の形に似ているから、人々は精神的な帰りの場所を探しているということを象徴した。
山で採られた粘土で作られたレンガは、再び都市から「元の自然」に戻り、ある循環を完成させた。そして、ここに漂っている郷愁は我々が共感できるものであると信じている。

EMPLOYEE QUESTIONNAIRE

自然の偉大さを感じる作品だと思います。
ネイチャーな質感と異質さのバランスが素敵です。
一番目に入ったときにインパクトを感じました。「潭」というものに馴染みがなかったが、「石が川に沿って、山を離れた場所に流される」=「都市の発展とともに移動する人々」を表現していて面白いと思いました。船のような形にしている所も興味深く、その場にいたらつい覗き込みたくなるような感じがして、一番惹きつける作品だったと思います。

ARTIST PROFILE

韓 皓文/ HAN HAOWEN
2016年
中国美術学院公共美術学部 卒業
2016年
中国三尚当代美術館 優秀賞
2018年
中国BYART芸術展 入選
2021年
武蔵野美術大学大学院油絵専攻野 卒業
2021年
東京SICF2022 入選
2022年
武蔵野美術大学博士後期課程 在籍

ARTIST VOICE

Q:応募のきっかけは?
A:募集は公募サイトから拝見しました。私の制作にとって、都市の中でひとつの空間内を自分一人だけで構成して作品を展開できる展示場があるのは理想的です。また、ギャラリーや美術館での短期間の展示と違い、街に住む人が偶然に作品と出会えるような長期間の展示が面白いと思います。そのため、今回の展示に応募しました。

Q:どうやって企画を考えたのですか?
A:これまでの制作と同様に、なるべくよく見られる素材を用いて制作しています。実際の展示空間を考察した結果、ガラスでできた透明な都市空間の中で、作品が外の時間と周辺に生活している人々の影響を受けることに気付きました。そのため今回は、作品を以前より柔らかく、丸みを帯びた造形にしました。夜の街で見ると昼間とは異なる雰囲気を感じさせるために、光という要素も控えめに使いました。最後、個人的に「虚構」というテーマに興味があるため、「室内に降る雨」というイメージを作品に取り入れ、その非現実性によってもたらされる美しさ及び切なさを表現しようとしました。

Q:作品に込めた想いを教えてください。
A:私は、大学の頃からずっと色々な都市を転々としてきました。大都会の中で流浪する気持ちは、現代都市に住む人なら誰にでも共通するものだと思います。この作品の中のレンガと同じように、人も各都市とぶつかって、常に目的地を探し続けているのです。それはある程度に悲劇的な過程とも言えます。人は常に、戻れない時間、たどり着けない場所に憧れるものだと思われます。しかし、悲しむ必要はないのかもしれません。この絶え間ない移動のプロセスは、自分の心と存在の意味を発見し、探求する旅でもあるのです。そして、作品を通じて、一瞬でもそれらを実現できる可能性が見えるようになることが、アートの意義のひとつだと思います。

Q:実際に作品を完成させた感想をお聞かせください。
A:この作品は、大都会の中心で石を谷間の「潭」に戻したシーンを表現しました。ここで虚構空間の中の自然と、現実空間の都市と重なり合いました。「自然」と「都市」は対立する概念として捉えられがちですが、そもそもこの対立は存在しないのかもしれません。現代人は、都市に依存している一方、自然に憧れています。私たち人間は自然の一部であり、そのレベルでは人間が作り出した都市文明もまた自然であることは見落とされがちです。このような二項対立の見方は、逆に自然と都市のつながりを断ち切ることになります。そのため、東京建物という街づくりの会社が運営しているギャラリーで展示す機会を得たことで、より興味深く、より考えさせられる作品となりました。

EVALUATION

小山 登美夫
(小山登美夫ギャラリー代表 / 日本現代美術商協会代表理事)

自然がもたらすダイナミックな移動と、人間が作り出したもう自然には戻れない物質のもう一度の再会を表すこの作品は、山の間に溜まってできた湖の形(逆さまの山の形)とそこに並々と称えられる水を想起させ、静かな世界に連れていってくれます。もう少し説明を廃し、ダイナミックな形に集中できたらさらに素晴らしいものになっていくと思いました。

野老 朝雄
(美術家)

自然物と人工物の間に位置し、心地よい意志を感じた。 潭という漢字を画像検索にかけてみた。そこには美しい水の光景が並ぶ。成程、内陸の潭の水底には様々な時間や過程を経て辿り着いた石や礫が堆積しているのであろう。人々も石のように移動していると韓氏は書く。 その移動を認知する眼は大多数のベクトルと少し距離を置いた場所に在るのであろう。水面と石を同時に視るような、多くの人々が見過ごしてゆく物語を記述してゆく行為は尊い。韓氏独自の世界観を突き詰めていって欲しい。 この作品制作を通し、また新たな循環の物語が続きますように。

坂本 浩章
(公益財団法人彫刻の森芸術文化財団 東京事業部 部長)

アートとデザインの違いには大きくわけて、合理性と行為という捉え方がある。どちらも作品と呼べるものであるが、そのプロセスには異なる始点と終点があり、この作品は、潭という現象を自然と人生に例えて、人々の営みの場所と再生を繰り返す輪廻のような巡回社会を表現している。その制作過程は、自らの行為を通して制作されたものであり、作品の随所に作者の痕跡を活かし、理論だけではなく身体の行為を交えて造形化されたことで、鑑賞する私たちも韓の世界を実体験できる。

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