Brillia Art
Brillia Art Award

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No.18 
Brillia Art Award 2023作品・アーティスト紹介

TITLE:
harvest
CONCEPT:
私は自分が生きてきた時間に意味や価値はあるのだろうかと、常々疑問に感じながら生きてきました。そのような疑問に対して、どんなに単調な日々の繰り返しに価値や意味などがなかったとしても、個人が生きてきた時間や積み上げてきた日常という物は、その人固有の唯一の存在であるという感覚を表現したいという思いで制作活動を続けてまいりました。
今回提案する作品のタイトルとした「harvest」は「実り」や「収穫物」を意味する言葉となっております。この作品で表す「harvest=実り」は上記に挙げた「個人が生きてきた時間や日常の積み重ね」です。どんなに単調で淡々と繰り返される日々であっても、それらが積み重なり、連なっていく事で築かれていく人生というものは、各々にもたらされる「実り」ではないのだろうか、という事をコンセプトとし、約10,000ピースに及ぶ小さな鱗状のパーツが大量に連なり、重なりあっていく事で表現される造形の制作過程を通して表現しています。

ARTIST PROFILE

日下 宗隆 / MUNETAKA KUSAKA
2010
名古屋学芸大学 メディア造形学部 ファッション造形学科 卒業
2012
名古屋学芸大学大学院 メディア造形専攻修士課程 修了
2013
金澤ファッションコンペティション2013 特別審査委員賞 受賞
2014
ナゴヤファッションコンテスト2014 奨励賞 受賞
2014
金澤ファッションコンペティション2014 繊研新聞社奨励賞 受賞
2015
ナゴヤファッションコンテスト2015 入選
2016
第90回装苑賞 入選
2017
第91回装苑賞 佳作2位 受賞
2018
ナゴヤファッションコンテスト2018 奨励賞 受賞
2020
EAST ENDERS COFFEEにて個展[Life Works]開催
2021
令和3年度 豊田文化新人賞 受賞
2022
とよたまちなか芸術祭2022にて作品[layers]出展

ARTIST VOICE

Q:応募のきっかけは?
私は衣装制作や布地を用いた立体作品の制作を活動の主体としております。
そのため、表現方法に限りのない立体作品の展示募集をしているコンペティションを探していたのですが、その中でBrillia Art Awardを公募サイトで知り、応募に至りました。

Q:どうやって企画を考えたのですか?
私はこれまでに制作を行ってきた中で、個々の作品の良し悪しや意味合い以上に、これまで「作る事を続けてきた」という事や、「これからも制作を続けていきたい」という思いに対して強い関心を持っています。この考えの中には、成果から生じる事柄以上に、それらが成されるまでのプロセスの中にある「積み上げていく事や繰り返していく事」に対する強い思いがあるように感じます。このような思いを起点とし、積み上げていく事や繰り返していく事を、自身を含めた多くの人々が生きる日常の繰り返しとリンクさせることで、今回の企画が出来あがりました。
それらを表現すべく、小さなパーツが集まって構成された試作をいくつか作ったのですが、それらが種子や果実のような形として出来あがっていく姿を見て、これは行動や時間の積み重ねから形作られた収穫物であるという感覚を持ち、作品のテーマを「harvest」としました。

Q:作品に込めた想いを教えてください。
この作品は小さな鱗状のパーツが大量に連なり重なりあっていく事で形作られています。これらのパーツのひとつひとつは大きな作品全体の形状に対して、非常にシンプルな形を成しています。このような構造はコンセプトにも挙げたように、単調な日々が繰り返される事で固有の時間が刻まれていく事や、ひとりひとりの小さな行動の積み重ねがひとつの社会として大きな流れを動かしている様子などと重ねる事が出来るのではないかと思います。
このように、この作品を通して、繰り返される日常が積み重なり少しずつ状態が変化していく様子や、これまで生きてきた時間の積み重なり、社会の中の一個人としての自身の存在などに視点が傾けられるような作品になっていれば嬉しく思います。

Q:実際に作品を完成させた感想をお聞かせください。
制作期間が限られている中で作品を完成させ、展示を完了させることが出来て本当に良かったと安堵しています。また、家族や友人に多くの場面で助けをいただいた事で作品を完成させることが出来たと思うので、制作の後押しをしてくれた全ての方々や自身の置かれた環境に心からの感謝を伝えたく思います。

EVALUATION

小山 登美夫
(小山登美夫ギャラリー代表 / 日本現代美術商協会代表理事)

日下さんの作品には、蛹から蝶が飛び立った後に下にちょっと出てくる汁のように作品の下に茶色い塊がある。卵、幼虫、蛹を経て成虫として空に旅立つ姿は何回か見たが感動ものです。日下さんの幾重にも繋がれた布自体の生成にも時間が必要だし、制作にも時間がかかっていく。そこに生まれる有機的なライン、動きもやはり自然と繋がっているようで、この街中のショーウインドーの中に新たな命が生まれたかのようなエネルギーが伝わってきます。

野老 朝雄
(美術家)

この革命の真っ只中、人工知能との付き合い方で右往左往している側としてこれを書く。そのような現在においても自らハードルを上げ、手を持って考え、手数を増やし、制作の道筋そのものを開拓していく作家とその作品に出会うことは幸せである。[アパレル]や[造形]などの閾/敷居を飛び越え、どんどん増殖しますように。

坂本 浩章
(公益財団法人彫刻の森芸術文化財団 東京事業部 部長)

アーティストにとって“ものづくり”は糧であり、自らの存在意義の証明となっている。そして、作者が毎日、欠かすことなく種を生み出す行為によって、作品は一つの華となり実となって形づけられていく。展示からは、吊り下げられた色鮮やかな作品とは対象に、床に置かれた腐食したような色の作品との関係から、作者自身が紡いでいる人生の詩が連綿と続く日常の繰り返しを表しているかのようで、鑑賞するものに対話を求めているように感じた。

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