Brillia Art
イラストレーター/近藤 達弥

松ヶ崎四季風物景観図

Brillia 京都松ヶ崎

京都の中心地の賑わいから少し離れ、豊かな自然と歴史に包まれた街、松ヶ崎。その住宅街の一角、高野川のほとりに佇む和の趣あふれるマンションBrillia 京都松ヶ崎のエントランスホールには、この地を象徴する風景画が飾られています。作品を手がけたのは、独自の色彩と世界観で多くのファンを魅了するイラストレーターの近藤達弥氏。今回、どのような思いを込めて作品を創られたのか、お聞きしました。

アーティストインタビュー

土地のアイデンティティを
一枚の風景画に

京都・松ヶ崎の自然と歴史を
一枚の絵にコラージュしてゆく

1974年静岡県生まれ。多摩美術大学絵画科卒業。
2004年グッドデザイン大賞を受賞した「ドレミノテレビ」で美術デザインを担当。第61回全国カレンダー展において「経済産業省 商務情報政策局長賞」を受賞。雑誌、広告、Web、音楽関係などでイラストレーション、デザインなど幅広く手掛けている。

このアートは、どのようにして生まれたのでしょうか。
Brillia 京都松ヶ崎は共用部のコンセプトとして“バイオフィリックデザイン”があると聞きました。敷地周囲は樹木で覆われ、高野川のせせらぎや虫の声、風の音などが“サウンドスケープ”として流される。また自然光を取り入れた和の趣あふれる空間になるとのことでしたので、私のアートも主張しすぎず、でもたまに足を止めて眺めたくなる、そんな作品を目指しました。周囲の景観や歴史を盛り込んでほしいという依頼がありましたので、高野川のほとりにマンションが佇んでいる様子を中心に、桜と紅葉が同時に描いて四季の移ろいを表現したり、京都の文化であるお茶を立てている人がいたり、京都五山送り火の1つである「法」の字が浮かび上がらせたり、さまざまな要素を取り込んでいます。

イメージはどのように作り上げていきましたか。
僕自身、松ヶ崎に行ったことがありませんでしたが、写真を見たり、文化や歴史を調べたりすることで、この地のアイデンティティのようなものを身体に染み込ませていきました。作成する際は、1つ1つの要素を描いたうえでパソコンに取り込み、コラージュのように組み合わせています。ただ切り貼りした感じではなく、一枚の風景画として仕上げたかったので、1つ1つの要素を風景に染み込ませるイメージで重ねていきました。よく見ていただくと抽象デザインもあったり、ファンタジーな世界観も取り込んでいます。また京都には古くからの歴史があり、この松ヶ崎もその積み重ねが作り上げたものだと感じたので、モノクロとカラーを組み合わせることで、過去から現在を表現しています。

色のインスピレーションは
自然から受けている

色といえば、近藤さんの作品はカラフルでポップなものが多いように思います。
確かにそうですね。ただカラフルを自分の作風にしているつもりはなく、水墨画のようなグレートーンのものも描きますし、今回のような和テイストなイラストも多く手がけています。カラーにしろグレーにしろ、そのとき自分がきれいだと思った色を使うようにしていて、色自体の表現はとても大切にしていますね。それは僕の実家が和菓子屋だったというのも、1つの要因かもしれません。子供のころ、父親が茶席用にカラフルな練り切りを作っている様子を見て、とてもきれいだなと思い、真似して粘土で作ったりしていましたから。

また南米を旅したときに、空の青さが日本と全然違うことに感銘を受け、一口で青といっても、これだけ違ったイメージが表現できると感じたことも、色での表現にこだわるようになったきっかけの1つ。あとは石ですかね(笑)。僕は昔から石、いわゆる鉱物が大好きで、よく眺めているんです。石は自然の造形物なのに形が素晴らしかったり、いい色をしていたりして、2つと同じものがないでしょう。あとは木を見て「いい形をしているな」と思うことも多いですし……考えてみたらアートのインスピレーションは自然から得ることが多いような気がします。

今回制作されるにあたり、難しかったことはありますか。
そもそも僕自身、広告デザインのお仕事が多いので、マンションの共用部に展示されるアートとしての作品とはどのようなものか、考えさせられました。たとえばマンションそのものの広告なら、主役であるマンション自体を華やかに描けばいいわけですが、今回はあくまで松ヶ崎の一風景の中にマンションがあり、主張しないけれど確かにそこにある。その存在感を出すのが初めてのチャレンジでしたね。そのためコラージュしながら作品ができていく過程は自分にとっても新鮮で、「あ、こんな感じになるんだ」「あ、こんな生き物もいるんだ」と、まるで昆虫採集をしているような発見とワクワク感がありました。

京の歴史のワンシーンに住まう
喜びを感じてほしい

改めてマンションにアートが設置されることの意味をどのように感じられますか。
私自身、自宅にはアートや息子の絵を飾っているんですが、やはり日々アートに触れ、心動かされることはとても大事なことだと感じています。特に息子が描く絵には子供ならではの感性があり、「子供にはこんな風に見えているのか」ととても刺激になりますね。マンション共有部のアートも同じで、ふだんは横目に見ながら何気なく通り過ぎるだけかもしれませんが、あるときふと立ち止まり、心が動かされたり解放されたり、いつもと違う感情が湧き上がるのを感じることがあるかもしれません。アートは常にそこにあることが大事なので、住民の方々が日々目にする共用部に設置するのは大きな意味があるんじゃないかと思います。特に今回描いたのは、ご自分の住まいがある松ヶ崎を一枚に集約したもの。多くの歴史や自然が残された松ヶ崎の風景の中に、ご自分が住むマンションもある。この地のアイデンティティを味わい「こんな歴史ある地に住んでいるんだ」という誇りを感じていただけるのではないでしょうか。

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