Brillia Art

Brillia x ART 対談— Vol.03 —これからの時代の
「暮らしとアート」の発信地に

東京・京橋に誕生した新しいギャラリー
「BAG-Brillia Art Gallery-」
(バッグ ブリリア アート ギャラリー)。
そのオープン記念展覧会
「ヘラルボニー/ゼロからはじまる」が
2022年1月23日まで行われています。
今回は、ギャラリーの新設に尽力した
東京建物の大久保昌之氏と
へラルボニー代表の松田崇弥氏、
そして、ギャラリー内で行われる展示会を
プロデュースする
彫刻の森芸術文化財団の坂本浩章氏から、
BAG-Brillia Art Gallery-
およびへラルボニー展にかける思いをお聞きしました。

自然な流れで生まれた
BAG-Brillia Art Gallery-

ものづくりに欠かせないアートの力

東京建物株式会社 
執行役員 住宅事業企画部
部長 大久保 昌之

―どのような経緯でBAG-Brillia Art Gallery-をオープンすることになったのでしょうか。
大久保 私たちはものを作り、サービスを提供する立場として以前から、「アートには暮らしを豊かにする力がある」と考えていました。そのため何らかの形でアートに関与していきたい思いが常にあり、2018年からは若手アーティスト支援を目的とした公募展「Brillia Art Award」も開催しています。また弊社が開発に携わり、2020年に開業した大規模複合施設「Hareza池袋」でもアートも手がけるなど、文化芸術活動に積極的に関わってきました。
一方で気になっていたのは、社員はこの活動にどれだけ関心を持っているんだろう、ということ。正直、あまり興味を持っていないんじゃないかという不安もありました。そこで今年、「Brillia Art Award」に対する意見を募ってみたところ、予想以上に大きな反響があったんです。中には「この作品は好きではない」というネガティブな意見もありましたが、こうした好き嫌いも含め、アートは人の心を動かし、刺激するんだと改めて実感しました。

そんな中、降って湧いてきたのが、京橋にある現在の東京建物京橋ビルを社内で活用できるという話。これまでの経緯もあり、だったらアートの街・京橋にふさわしくギャラリーにするのがいいのではないか、という意見で一致したんです。あちこちで少しずつ高まっていた文化やアートに関わる活動への気運が、自然に組み合わさって形になったという感じです。

坂本 BAG-Brillia Art Gallery-のこけら落しにお願いしたへラルボニー代表の松田崇弥さん・文登さんとは以前から、東京建物の仮囲いのアートをお願いしたり、今年マンションのゲストサロンに複製画を展示させてもらうなど関係性があったので、BAG-Brillia Art Gallery-のオープニング展もほとんど検討することなく、ごく自然に「へラルボニにーさんにお願いしたい」と決まりました。それぐらい誰もがピッタリだと思いました。

松田 私たちヘラルボニーは、障害のある人たちの個性が順応する社会を目指し、彼らのアートをプロダクト化して世に送り出す活動をしています。2年前に、東京都が主催するスタートアップ支援事業を通し、「東京建物さんとご一緒したい」と手を挙げ、関わらせていただくようになりました。それがまさか、BAG-Brillia Art Gallery-のこけら落としという大役をいただくことになるとは……恐れ多い気持ちを抱きつつ、大変うれしくありがたく思っています。

公益財団法人 彫刻の森芸術文化財団
事業推進部 環境芸術
坂本 浩章 様

素晴らしいものは素晴らしい

障害のある作家が作るアートを
特別視しない社会を目指す

株式会社ヘラルボニー
代表取締役社長 CEO 松田 崇弥 様

―松田さんが東京建物と関わりたい、と思われたのはなぜでしょうか。
松田 私たちには、4歳上に自閉症の兄がいるのですが、子どもの頃から兄が「可哀想」と言われることに疑問を感じてきました。障害のある人にだって同じ感情があり、当たり前の毎日を過ごしているのに。そこで私たちは、障害を「特性」と捉え、その価値を社会に発信していこうと考えました。その1つが、主に知的障害のあるアーティストによる色彩豊かな作品を製品化し、販売することです。
かつて障害のある人々は社会的な抑圧から解放されるため、車椅子で国会に出向いて署名活動を行うなど積極的に活動し、結果として法律を動かしてきました。でもその活動を行ってきたのは、当事者やその身内が中心だったこともあり、むしろ社会との分断を色濃くさせてしまった側面もあります。私たちが目指すのは、白黒はっきりさせるものではなく、もっと自然に障害のある人々が溶け込める社会です。アートというフィルターを通して、純粋に「これ、素敵だよね」「かっこいいよね」と言ってもらえる作品を作ったのが、たまたま障害のある作家だった、というふうにしたい。その活動の一環として私たちが今進めているのがインテリア事業です。

障害のある作家によるアートを日常生活に、さらにはオフィスやレストラン、宿泊施設の中に落とし込むことで、障害をもっと身近なものにしていきたい。かつてアーツ&クラフツ運動によって世の中に美術工芸が広まっていったように、いつかへラルボニーによって障害のある作家によるアートが暮らしの中に当たり前にある世の中にしたいと思っているんです。そういうわけで東京建物さんとぜひコラボレーションしたい、と思ったのですが、まさか彫刻の森芸術文化財団さんにまでご協力いただき、こんな大きなプロジェクトに参画できることになるとは、夢のようです。

坂本 松田さん兄弟は、兄の文登さんが小学生のころに書いた作文に、お兄さんが周囲から特別な目で見られることに対して「同じ人間なのになぜ」という違和感や悲しい気持ちを表現されており、弟の崇弥さんは大学生時代にお兄さんを題材にされた映像を作っています。それをみて感じるのが、松田さん兄弟は本当に障害のある方々に対してフラットな視線を持っているということ。だからこそ障害という垣根を超えて「素晴らしいものは素晴らしい」と感じる感性を持たれているし、彼らだからこそ見出せたアートであり、ここに大きな可能性を感じています。

大久保 私たちもヘラルボニーさんの活動に感銘を受けました。障害のある方のアートだから、と偽善的な思いで評価するのではなく、純粋にいいと思えるものを世の中に送り出していく仕組みがすばらしい。これこそ今の時代にふさわしいサステナビリティな活動だと思います。

初期衝動を突き詰める

「ゼロからはじまる」にかける思い

―今回の「ゼロからはじまる」というテーマにはどのような思いが込められているのでしょうか。
坂本 一つには、ここBAG-Brillia Art Gallery-を起点に新たに「暮らしとアート」をテーマに発信していこう、という東京建物さんの決意を込めました。そしてもう一つ、今回の企画は障害のある作家によるアートだけでなく、ヘラルボニーさんの原点でありクリエイティブの源でもある松田兄弟にもフィーチャーした展示になっています。ヘラルボニーがどのように生まれたか、その「ゼロ」を知っていただいてこそ、障害のある作家によるアートがサスティナブルな多様性に満ちたものであることを共感してもらえるのではないか、そしてそれこそが、東京建物さんの目指す方向性の指針を表現できると考えたんです。

松田 最初にこの企画を提案いただいたときは正直、戸惑いましたね(笑)。もともと私たち自身、表に出て自分を出していくタイプではありませんので。ただ坂本さんたちに、初期衝動を突き詰めたものにしたほうがいい」と言われ、それは非常に大切なことだと思いました。実際、改めてヘラルボニーが生まれるゼロを見つめ直し、兄の日記帳を読み直したりしたことで、活動を始めた思いや指針を明確にすることができました。

大久保 実際に始まってみると世の中の反応が非常によく、ありがたいことに多くのメディアにも取り上げていただいています。一方で私が気になっているのは、弊社の社員がどう感じているか、ということ。企業とアートの関わり方には、収集して美術展を行う、アーティストのスポンサーとなり活動を支援する、企業のブランディングの一環として行うなど様々ありますが、私自身が非常に関心を持っているのが、「アートによって社員の考える力が養われる」ということです。今回は、アートプロダクトが世の中を変えていくのを目の当たりにすることで、ものづくりに対する考え方が研ぎ澄まされるのでは、と期待しています。

松田 実際、東京京建物の社員の皆さんにはすでに多くご来場いただいていますよ。ありがたいことに「お客さまのお土産にしたいから」とグッズを買ってくださる方が多いんです。

坂本 それは企業が手がけるアートの取り組みとしては、とても意義のあることですね。社員の皆さんがグッズを買い、お客さまに持っていくことで、社員の皆さんが企業の指針を伝える語り部になりますし、社員の皆さんにとっても自分たちがこれだけ創造性のある企業にいるんだ、という誇りにつながりますから。

大久保 ヘラルボニーの作品は話題性があると同時に、やはり他にはないオリジナリティに人を惹きつける力があると思います。

京橋から発信する「暮らしとアート」

新しい時代のアートのあり方とは

―BAG-Brillia Art Gallery-では今後、どのような企画される予定でしょうか。
松田 「へラルボニー/ゼロから始まる」展を1月23日まで開催したあと、2月からは「暮らしとアート」に寄せたヘラルボニーによる第二弾展示を予定しています。クッションやソファなど、ファブリックを通して、生活の中にどうアートが介在できるかを提案していけたらと思っています。

大久保 そもそもBAG-Brillia Art Gallery-はコンセプトとして「暮らしとアート」を掲げていますが、立地である京橋には江戸時代の流れから小さな画廊やギャラリー、古物商が立ち並び、まさに暮らしとアートが融合する場所。私たちのコンセプトとの親和性があると感じています。特に歩行者天国の入り口という好立地ですから、「ちょっと時間ができたから」と気軽に立ち寄れるような場所に育てていきたいですね。

坂本 おっしゃる通り京橋は、ものづくりとアートの聖地としても知られていますから、この立地特性を活かしながら、東京建物さんらしい企画を一緒に考えていきたいと思っています。
実はコロナ禍を経験した今、アートの世界も大きな変革期を迎えていると私は感じています。従来はギャラリーには、非日常を体験し、感性を研ぎ澄ますことができる場所という側面がありましたが、コロナ禍によってノーマルがニューノーマルになり、非日常が日常になるなど、私たちの価値観は大きく変わりました。そんな時代にアートは人々や社会の中で、どのような存在になっていくべきなのか。これはアーティストにも我々にも挑まれている、大きな課題だと思っています。

大久保 そういう意味で我々も、これからの時代はやはり「暮らしとアート」というコンセプトが一つのフックになると考えています。そんな東京建物の理念を今後も、ここ京橋から発信していきたいと思っています。

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