Brillia Art

Brillia x ART 対談— Vol.07 —なぜ今、シティポップなのか。
その魅力と影響を探る

1970年代から80年代にかけて日本の
音楽シーンを彩ったシティポップが今、
世界中から注目を集めています。
音楽と同時に注目されているのが、
これら名盤のアートワークです。
BAG-Brillia Art Gallery-では現在、
シティポップにちなんだレコードジャケットを
約300枚集めた
アート展「Art in MUSIC 
シティポップ・グラフィックス」を開催中。
今回は、フリーアナウンサーの上柳昌彦氏を
プレゼンターに、本企画監修を手掛けた
音楽ライターの栗本斉氏、
東京建物の秋田秀士、大久保昌之に、
シティポップへの思いをお聞きしました。

世界で再評価されるシティポップの世界

海外の音楽ファンが気づいた
1980年代の日本の音楽の魅力

音楽&旅ライター/選曲家
栗本 斉 様

上柳 シティポップが今、世界的なブームになっていますね。そもそもシティポップとは、どういう音楽のことをいうのでしょうか。

栗本 それが実は曖昧で、正確には定義づけられないんですね。そもそも「シティポップ」という言葉自体10数年前に生まれたもので、リアルタイムで聴いていたころにはありませんでしたから。強いていうなら1970年代後半から1980年代にかけて生まれた音楽の一ジャンル。フォークや歌謡曲が流行っていた時代に、洋楽の影響を受けて新しく生まれた“都会的なポップス”と言ったらいいでしょうか。

シュガー・ベイブをはじめ、大瀧詠一さんや山下達郎さん、荒井由実(松任谷由実)さんなどが代表的アーティストですが、アーティストというより楽曲単位で評価されることが多く、特に海外では楽曲によって菊池桃子さんやWINKがシティポップにジャンル分けされているものもあります。

上柳 確かに数年前に海外から火がつき、そのブームが日本に逆輸入された感じはありますよね。動画配信サービスが発達して、国や時代を問わずあらゆる楽曲が聴けるようになったことで、日本の過去の音楽の魅力が掘り起こされたという感じでしょうか。

栗本 そうですね。そのブームを受けて海外のメディアが日本のポップスを取り上げるようになり、竹内まりやさんの『PLASTIC LOVE』がバズったことで一気に広がりました。今、海外のクラブで松原みきさんの『真夜中のドア〜stay with me』のイントロが流れた瞬間、会場が大盛り上がりするそうですよ。

上柳 そういえば以前、山下達郎さんにお話を聞いたことがありますが、作曲の際は、まずはリズムから作ると言っていましたね。そこにメロディを乗せ、詞は最後に考えるという。リズムを大切にして作られたからこそ、クラブシーンにも合うのかもしれませんね。

栗本 私たち日本人は、その曲を歌っている歌手のイメージや歌詞の内容、どんなシーンで使われているか、といった様々な情報の “色眼鏡”をかけて聴いてしまいがちですが、海外の方は純粋にリズムとメロディを聴きますから、海外で再評価されたというのも納得できますね。演奏も日本のトップミュージシャンが行っているので、実は非常にうまいんですよ。

ちなみに今、もっともシティポップが盛り上がっているのはどこだと思いますか。実はアメリカの西海岸なんです。もともとシティポップ自体、日本人アーティストが西海岸の音楽に憧れて生まれた音楽ですが、それが巡り巡って西海岸で評価されるなんて、感慨深いですよね。

先ほど元シュガー・ベイブの伊藤銀次さんにお会いしましたが、銀次さんも最近、海外の若い音楽ファンから「あなたの音楽は素晴らしい」というダイレクトメッセージをもらうことが増えたとおっしゃっていました。音楽も国と世代を超えた時代になったのだと感じますね。

フリーアナウンサー
上柳 昌彦 様

悩み多き時代を支えてくれた音楽

1人1人の青春はシティポップとともにあった

東京建物株式会社 取締役常務執行役員
住宅事業本部長 秋田 秀士

上柳 秋田さん、大久保さんはまさにリアルタイムで聴いていた世代だと思いますが。

秋田 いや、本当に懐かしいです。当時僕は大学生で、青春期のど真ん中でしたから。ディスコに行ったり、湘南に行ったり、今でいうシティポップの世界観を味わっていたな、と思い出しました。

大久保 僕も学生時代、ドライブしながら聴いていましたね。友人たちを送った帰り道、1人で熱唱したりして。初めて『PLASTIC LOVE』を聴いたときは、なんて乾いたかっこいい曲なんだ!と感動しましたよ。夜中のドライブに本当に合うんです。それが最近、海外でカヴァーされていることを知り、思わず「僕の青春の曲が!」と複雑な気持ちになりましたね(笑)。

上柳 当時から、この曲の魅力に気づいていたとは、さすがです。ちなみに僕はちょうど1981年にニッポン放送に入社しまして、研修を受けてボロボロになっていたころに、この仕事が向いていないんじゃないかと悩みながら新宿をぶらぶら歩き、紀伊国屋書店で見かけて買ったのが、大瀧詠一さんの『A LONG VACATION』と寺尾聰さんの『Reflection』。この音楽との出会いが、僕の80年代の景色をガラッと変えてくれた気がします。

ちなみに栗本さんは2022年2月に『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』(星海社新書)を上梓されていますが、栗本さん自身はリアルタイム世代よりお若いですよね。

栗本 僕は少し後ですが、小学生のころから音楽が好きで、ラジオをよく聴いていました。そこで山下達郎さん、佐野元春さんの音楽が好きになり、そこから遡っていわゆるシティポップと呼ばれる楽曲を聴くようになったんです。

秋田 確かに当時はCDなんてなかったから、ラジオで聞くか、レンタルレコードショップで借りて、カセットテープにダビングしたりしていましたね。それが今はサブスクリクションの時代。

栗本 当時は「FM STATION」というFM情報誌もありましたからね。この表紙を飾ったのが、鈴木英人さんが手掛けたイラストで、いまや彼の絵もシティポップのキービジュアルの1つになっていますからね。

東京建物株式会社 執行役員
Brillia Art Gallery Executive Producer
大久保 昌之

ビジュアルを楽しみながら
音楽の世界に浸る

暮らしの中で楽しむアートに、
音楽という新たな切り口を

上柳 さて今回の企画展は、栗本さんが監修されていますが、どのような経緯で携わることになったのですか。

栗本 ちょうど著書のプロモーション中に、BAGの方から「シティポップのジャケット展をやりませんか」とお声がけいただいたんです。僕もそれを聞いて、確かにロックやジャズのジャケット展はあっても、シティポップはあまり聞いたことがないな、と思った瞬間、海が描かれたブルーのジャケットがズラっと並んでいる絵が頭に浮かんできて。やってみたいと思いました。

上柳 確かにシティポップといえば、永井博さんやわたせせいぞうさんたちが描く海と空のイラストが印象的ですよね。ギャラリーにも正面にずらっと青いジャケットが並び、一気に引き込まれます。今回の展示では、どのような工夫をされたのですか。

栗本 ジャケット展というと、つい年代順とかアーティスト別、カテゴリ別に分けたくなりますが、今回はアート展ですので、ビジュアル重視で分類しました。入口はイントロダクションとして、シティポップの代表作を並べていますが、あとはほとんどビジュアル別。シティポップのイメージである青い海を筆頭に、摩天楼や都会の夜景、夜明けや黄昏、またタイポグラフィーという分類もあります。

当時の文字は手書きですし、ビジュアル自体もフィルムで撮影された写真ですから、今とは違った質感が楽しめます。そういう意味では、音楽ファンだけでなく、若いクリエイターの方々にも刺激になるのではないかと思いますね。実際、シティポップの影響を受けた若いアーティストが続々と誕生しているんです。

上柳 ここBAGは、暮らしとアートをテーマにしたギャラリーですが、今回は音楽とグラフィックという視点で楽しめるということですね。秋田さん、大久保さん、実際にご覧になっていかがでしょうか。

秋田 まさに我々世代にフィットする企画であって、個人的にも嬉しく思います。Brilliaはマンションブランドとして、暮らしの中のアート体験に力を入れてきましたが、こういった切り口は新鮮でした。レコードジャケットは部屋に飾るのにちょうどいい大きさですし、その人の趣味も表現できますよね。

大久保 BAGではこれまで、どちらかというと見て楽しむアート展が多かったのですが、今回はシティポップがBGMで流れていますし、僕などジャケットを見ただけで、その音楽が脳内で再生され続けてしまいますからね。まさに暮らしの中にアートがあるとは、こういうことかと実感しました。ここにいるだけで気持ちが沸騰してしまいそうです(笑)。

上柳 リアルタイム世代には懐かしく、若い世代にとっては新鮮さを感じていただけるのではないかと思いますので、ぜひフラッと立ち寄ってほしいですね。

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