Brillia Art
Brillia Art Award

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No.24 
Brillia Art Award Cube 2025作品・アーティスト紹介

TITLE:
春を待つ声
CONCEPT:
これまでは音の少ない自然の中で聞こえてきた音や、記憶・思い出をもとに聞こえてきた音を元にした作品を発表してきました。
今回は音で溢れかえる都市の中を実際に歩いて聞こえてきた音をリサーチし作品を制作しました。都内を走る数ある線路の中で、東京の中心を円環のように走っている山手線を選び、実際に線に沿って歩きました。
言葉を集めた時期が冬から春にかけてということもあり、会話から季節と共にそれぞれの進路を考えてる人の声を多く聞くことができました。
山手線のそれぞれの駅で、人や街の様相、話している内容がガラッと変化するものの、ありふれた日常の音が、そこには沢山ありました。
また至る所で開発が進み、古い建物が新しく変わっていく様子も沢山見受けられました。
そういった大きな変化が進んでいく中で、変わらずそこにある何気ない日常の会話や、人々が自分達の進路について前向きな会話をしている様子に興味を持ちました。
そこから時間の流れと共に古いものが新しいものへと変わっていく中で、
普段なら気に留めないような日常の会話や生活の音が、春を待つ声とともにひしめき合いながら、ガラスの中にあり続けられたら良いと思い作品を制作しました。
作品は品川駅から東京駅まで歩くにあたり、工事現場の外壁に映った連続する明かりや、山手線の移動する窓、夜になると輪郭が消えてビルの明かりが段々になって寄せ集まっている様子から、ひしめき合う形の着想を得ました。 作品を通じて春を待つ人々の声を感じていただければと思います。

ARTIST PROFILE

春田 美咲 / MISAKI HARUTA
<略歴>
2015年
多摩美術大学絵画学部油画専攻卒業
<活動歴>
2013年
トーキョーワンダーウォール 受賞作品展(東京都現代美術館 / 東京)
2015年
「多摩美術大学卒業制作展・大学院修了制作展」(多摩美術大学/東京)
2015年
「東京五美術大学連合卒業・修了制作展」(国立新美術館 /東京)
2017年
アクリルガッシュビエンナーレ2016 入選・入賞作品展 (ターナーギャラリー/東京)
2019年
中之条ビエンナーレ2019(旧第三小学校体育館/群馬)
ゲンビどこでも企画公募2019(広島市現代美術館/広島)
第6回 蔵と現代美術展(丹徳庭園母屋/埼玉)
2020年
第23回岡本太郎現代芸術賞作品展(川崎市岡本太郎美術館/神奈川)
2021年
中之条ビエンナーレ2021(旧第三小学校家庭科室・図書室 他/群馬)
2022年
押入れ百貨展(旧廣盛酒造/群馬)
2023年
個展「水底の渦」(galleryneo_senshu/茨城)
ARTPARKTSUKUBA2023(二の宮公園/茨城)
中之条ビエンナーレ2023(伊参スタジオ/群馬)
個展「轟々と流れる」(vientoartsgallery/群馬)
2024年
ATAMIARTGRANT2024(ナギサウラハナレ/静岡)
神戸六甲ミーツアート2024(六甲山/兵庫)
<受賞歴>
2013年
トーキョーワンダーウォール 入選
2014年
タグボートアートフェス2014 審査員賞
2017年
ギャラリーへ行こう2017 入選
2017年
アクリルガッシュビエンナーレ2016 優秀賞
2019年
ゲンビどこでも企画公募2019 入選
2020年
第23回岡本太郎現代芸術賞 入選
2021年
群馬青年ビエンナーレ2021 入選

ARTIST VOICE

Q:応募のきっかけは?
これまで音の少ない自然の中で聞こえてきた音や、記憶・思い出をもとに聞こえてきた音を元にした作品を発表していたので、今年はあえて音で溢れかえる都市の中で聞こえてきた音を一年かけて作品にしたいと考えていました。
展示場所の東京建物八重洲ビルは東京駅の近くにあり、自分が今まさにやりたいと思っていたことと、繋がったのがきっかけです。

Q:どうやって企画を考えたのですか?
歩いて聞こえてくる音、電車の音が具体的にどういったイメージなのか、どういった形なのか、納得がいくまでじっくり考えたかったので、実際に山手線の線路に沿って何周か歩き、考えました。

Q:作品に込めた想いを教えてください。
歩いていると、古い建物が新しい建物に変わっていくのをしばしば見かけました。また冬から春ということもあり、人々の話している会話が前向きなものであることに興味をもちました。
私の周りでも、青年期に影響を受けた馴染み深い建物がなくなったり、友人が結婚したり子供ができたりとそれぞれが変化しています。
そういった大きな変化が進んでいく中で、変わらずそこにある何気ない日常の会話や、人々が自分達の進路について前向きな会話をしている様子に興味を持ち、形にしたいと思いました。

Q:実際に作品を完成させた感想をお聞かせください。
1月の終わり頃から4月まで時間をかけて、リサーチと制作をしたので感慨深いものがあります。山手線は駅ごとに街の様相、人々の会話などがガラッと変わり魅力的でした。それでもそれぞれの街の中での何気ない会話というのがありました。そういった言葉や音が折り混ざって、ショーウィンドウの中でひしめき合うような作品を形作る作品として制作しました。作品を通じて春を待つ人々の声を感じていただければと思います。

EVALUATION

小山 登美夫
(小山登美夫ギャラリー株式会社 代表取締役/日本現代美術商協会副代表理事)

今回の春田さんの作品は、山手線で集めてきた、音や声を文字という視覚的なものに起こして、それを漫画の吹き出しという丸にちょっとしたシッポを加えた日本的な──でももう世界的になった表現の中に入れて、見る人を容易に音や声の空間と時間に導いてくれる。意味や感情やメッセージといった異なる階層の音に見る人が何かを思ってその前を通り過ぎる。その瞬間を起こすのが素晴らしいと思います。

橋本 和幸
(東京藝術大学 美術学部長・美術研究科長 デザイン科 教授 兼 芸術未来研究場 瀬戸内海分校プロジェクトリーダー)

山手線を一周しながら集めた音と言葉を文字で紡いだ作品です。コンセプトが魅力的だったので、完成を楽しみにしていました。四方から見えるガラスケースを意識して空間が構成されており、シンプルながらも反射を取り込むことで、興味深い展示になっていたと思います。
今年は東京でデフリンピック(耳が聞こえないアスリートのためのオリンピック)が開催されることもあり、こうした文字情報による展示は、聴覚文化に慣れ親しんだ私たちに新たな視点をもたらしてくれるのではないでしょうか。

遠山 正道
(株式会社スマイルズ 代表/株式会社 The Chain Museum 代表取締役)

1つの現代アートの鑑賞時間は8秒とも言われるが、春田の言葉の彫刻には人の足を止め想像のスイッチを入れる構造がある。吹き出しの言葉は手裏剣か無回転で落ちるナックルの様に向かってくる。この作品の前でニヤついている人と友達になりたい。

坂本 浩章
(公益財団法人彫刻の森芸術文化財団 東京事業部 部長)

作者は、その場所、その時の瞬間、そこに存在する空気を絵画や造形で作品化しており、今回は山手線に乗ってさまざまな声を拾い、言葉を活字に起こして構成することで、その場に居たような疑似体験を覚えました。それは、一文字一文字手書きで描かれた文字だからこそ、人の息遣いを感じて臨場感を演出できていると思います。また、文字のレイアウトや照明の位置により、さらに奥行きや空間の広がりも表現されていることで、作品越しに歩いている人と重ね合わせて眺めると漫画の吹き出しのように声が聞こえてくるようです。

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