


力石さんの今度の作品は、お墓!と聞いて驚いていたのですが、出来てみると明るい幸福感にみちたメモリアルな碑のようなものになっていて、何匹か、何本かわからない太古の生物や植物が元気に活動したり、生い茂っていた頃に思いをはせる場所となって、時期も夏でピッタリだったのではないかと思います。

石油の源が数億年前の生物にあるという壮大な時間軸を、アクリル糸で編まれた“墓石”として現代都市に投影した作品。編みの繊細さと都市の雄々しさが交差し、未来と過去を重ねる祈りを想起させます。楽しみながら編み進めた作者の気配が糸の軽やかさに宿り、作品と台の大きさや高さのバランス、配置が展示空間に心地よく調和している点も印象的でした。

丁度今、Green dayのBasket Caseを聴きながら書いている。能天気に明るいハッピーな疾走感ながら歌詞は裏腹に精神的な混乱や不安を書いている。Basket Caseとは第一次大戦で手足を失った戦士をバスケットに入れて運んだことからきていると言う。力石さんのこの作品の柔らかい優しく包み込まれ現れるカワイさと、そこに潜む太古からの沈澱した時間と累々の死骸、墓というタブー。両儀が広ければ、我々が飛び込むタイミングも掴みやすい。息を殺して、今、微笑む!

力石さんは10年以上前から、編むという行為で人との繋がりや環境との関係性を作り出して、サイトスペシフィックな作品を生み出してきていましたが、同時に素材の毛糸に向き合い自然や社会情勢へ意識をより高めており、本作品は自身が向き合ってきた毛糸という素材に対してのリスペクトを感じさせられた。作品を通して、地球環境から生まれた化石素材の上で生活する者として、改めて環境への配慮を熟視するきっかけになった。