AIの技術を用いて生み出されたアート作品、いわゆるAIアートは急激に普及しつつあります。一方で、AIアートとファインアートの差は、未知数であることもまた現実です。
窪田望氏は、デジタルアートのマーケットプレイス(取引市場)であるFoundationのクリエイターランキングで、世界一位になったことのある作家です。AIの技術的側面に精通しつつ、アーティストとして多彩な活動を行っています。
本展では、アーティストとしての窪田望氏がAIのアルゴリズムを駆使して制作した、AIの新しい価値を引き出す作品を通して、ファインアートとしてのAIアートを探求します。
また、AIによるアートはリアルで精緻を極めるものが大半であることに対し、本展では「引き算」(要素を減らしてゆくこと)の機能を実装し、徹底的に題材となるテーマから引き算を繰り返しました。いわば、AIが生む「余白」に着目した作品づくりという世界観を、新たに創出します。
■AIエンジニアが捨て去った風景の彫刻
今、AIは未来のものではなく、ChatGPTなどによって身近なテクノロジーとして、多くの人が利用できるものになってきています。しかしChatGPTは自然言語を使って正解を返してくれるものの、人と人とのコミュニケーションにおいてはそれだけでは不十分です。落ち込んでいる時に横にいてくれたり、言葉によらない寄り添いも必要です。
今回、窪田氏は18件のAI特許を取得している立場から、ChatGPTを改造し、質問から答えまでの“あいだ”を余白として表現しました。ユーザーの入力した文章を“喜怒哀楽”に分類し、4つの布の動きで見えない空間を可視化しました。
本来であれば、質問者は直接言葉による回答を求めますが、布の動きを見ながら感覚的に答えを認識し、人に寄り添うAIの姿が体感できることを狙いとしています。
■AIによる「引き算」のアート作品
本来のAIアートは、さまざまなテキストと画像をペアで学習させたAIを用意し、テキストと画像の誤差を最小化するように設定します。そして、画像生成するAIとその作品の良し悪しを判断できるAIを何度も戦わせる「足し算」の方法で作品を完成させますが、本展では、そうした流れに対し、AIに「引き算」を実装し、極限まで色や線、構図をシンプルにした作品により、AIアートの新しい可能性を提示します。
YouTube講演家×コミュニケーション研究家
〈14:00~〉